2016年第39回日本アカデミー賞
最優秀アニメーション作品賞受賞の
『バケモノの子』
先日金曜ロードショーで放送されていましたが
見逃した方にもぜひおススメしたいです!
「子ども向けのアニメなんでしょ?」
そうですね。
確かにキャラクターなど絵のタッチは
子どもっぽい印象が強いですよね~。
実際に、私と一緒に映画館に観に行った
わが子らがめちゃくちゃ大ウケだったので
子どもが喜ぶ映画なのは間違いありません♪
コミカルなキャラクターたちのやりとりに
ゲラゲラ笑ったり、
ヒーローもののようなかっこいいアクションに
ワクワク胸を躍らせたり。
でも、この映画の魅力はそれだけじゃないんです。
〝大人だからこそ感じる切なさや親心に
思わず涙してしまう。〟
これって何?どんな意味があるの?って
子どもには気付けない深い意味合いに
気付けるのは
様々な人生経験を重ねてきているから。
そんなオトナのあなたに、ぜひ観てもらいたい、
キュンとしてスカッとする映画。
その魅力をご紹介していきます♪
目次
バケモノの子のSTORY
それでは、まずは映画のあらすじを
ざっと説明していきます!
バケモノ界でも特別に栄える渋天街を長年治める
「宗師」が引退して神に転生すると宣言し、
それにあたって後継者を選ぶことになった。
候補は2名、
人望も実力もある「猪王山」と
乱暴者で嫌われ者の「熊徹」。
(画像はすべて「バケモノの子」公式HPより引用)
場面は人間界の渋谷の繁華街。
雑踏の中を一人さまよう
主人公の9才の少年「蓮」。
離婚して一人で子育てしていた母が
交通事故で亡くなり、
父親も行方知れず。
本家の跡取りとして、
好きでもない親戚に
引き取られるのが嫌で、
家から逃げ出したのだった。
一人ぼっちでうずくまる歩道の片隅で、
連は二人連れのバケモノに出逢う。
バケモノは
「俺と一緒に来るか?」と
蓮に声をかけたが、
そのまますぐ去ってしまう。
蓮は家出少年を補導する警察に追われ、
また見かけたバケモノを追いかけるうちに、
バケモノの世界「渋天街」へ紛れ込む。
そこで僧侶のバケモノ「百秋坊」に出会うが、
彼はさっき渋谷で出会ったバケモノ
「熊徹」と「多々良」の友人だった。
熊徹は宗師から
「後継者になるには弟子をとれ」
と命じられていたが、
その粗暴さから
弟子がつかないために、
蓮を自分の弟子にすることにした。
蓮はそれには反発したが、
その夜は
熊徹の家に一晩泊まることに。
名前を聞いても名乗らない蓮に、
熊徹は
「9才だからお前は今から九太だ」
と名付けた。
翌日、広場で
人間は胸の奥に闇を宿すから
弟子にするのはやめるように
忠告する猪王山に熊徹が反発。
力での戦いに発展する。
その場の全員が猪王山の味方で、
熊徹が一人ぼっちだと気付いた九太は
「ほんとに強くなるなら
弟子になってやってもいい」
と熊徹の弟子になることを決意する。
修行を始めた九太だが、
熊徹の教え方が雑なために
さっぱり技が身に付かない。
怒鳴り散らすばかりの熊徹と
歯に衣着せぬ本音でぶつかる九太。
それでも九太は、
弟子として成長しようと
百秋坊から弟子の行いを
一生懸命学ぶ日々の中で
猪王山の息子の
「一郎彦」と「二郎丸」と知り合う。
猪王山に比べて
だらしない熊徹にいら立つ九太は
その思いを熊徹に本気でぶつけ、
熊徹は腹を立てつつも自分を見直す。
その傍らでは
常に百秋坊と多々良が見守っている。
宗師のススメで
全国各地にいる様々な宗師を
訪ねる旅に出た4人。
旅の中で
個性的な宗師たちに刺激を受け、
熊徹の生立ちを聞き、
有意義な旅となる。
旅から帰った九太は、
母からのヒントを受けて
こっそりと熊徹のマネをする
修行を始める。
すぐに熊徹にバレたが、
自分を真似られて
まんざらでもない熊徹。
そのうちに修行の成果が出て、
熊徹を見事にやりこめることも
できるようになった九太。
剣さばきや
パンチを教えてもらう代わりに、
九太も熊徹に足の動き方を
教えることになった。
ともに教え合い修行を重ね、
みるみる時は経ち、
九太は17才に。
成長したのは九太ばかりでなく、
師匠として関わるうちに
熊徹も技が洗練され
大きな成長を遂げていた。
ある日、
偶然に人間界の渋谷に戻った九太。
立ち寄った図書館で、
女子高生の「楓」と出会い、
勉強を教えてもらうことに。
ひそかに人間界に通い、
勉強を深める九太。
その飲み込みの良さに、
楓は大学受験のための
高卒認定試験を受けることを勧める。
諸々の手続きのために
区役所に行った九太は、
そこで実の父親の現住所を知り、
会いに行くことに。
再会を果たした九太と父親。
その夜、人間界の教科書を見つけた
熊徹と言い合いになった九太は、
父親の元へ行くと言って
熊徹の家を出る。
九太がいなくなった熊徹は
元の荒れた性格に戻り、
九太も理由のない苛立ちから
父親に反抗してしまう。
街を歩いている九太は、
ショーウィンドウに
かつて渋谷をさまよっていた
9歳の頃の自分の姿を見る。
さらに、
今の自分の胸に
真っ黒い闇の穴
が開いているのが見えて
パニックになる。
楓と話して落ち着いた九太は
バケモノ界に戻り、
翌日二郎丸の家に遊びにいった。
そこで明日が
次期宗師を決める決戦の日だと知る。
帰りに
玄関まで送ってくれた一郎彦が
突然九太を襲い、
意識が薄れる中で、
九太は一郎彦の胸に
自分と同じ心の闇があるのを見る。
翌日、ついに熊徹と
猪王山の戦いの火ぶたが切られた…
ここからクライマックスに向けて
どわぁ~っと急展開していきます。
最後までお伝えしたいですが、
それはぜひ本編を観てのお楽しみということで♪
バケモノの子は「親子のカタチ」を見直す物語だった
細田守監督自身も語っているのですが
バケモノの子は
「親子の絆」を描いた話です。
作品中では
対比となる親子関係がいくつか
あるので、それを見てみましょう。
①蓮⇔実の母親、父親
母とは9歳の頃に死別したが、
その後も(たぶん)チコという姿で
寄り添い見守ってくれている。
父とは長く離れていたが
離れていた蓮を思いやり、再会後は
心から力になろうとしてくれる
②一郎彦⇔猪王山
偉大な父親に憧れ大きな理想としているが、
様々な面でなかなか父親に近付けないことが
コンプレックスになる
③楓⇔楓の両親(楓の話にだけ出てくる)
親の求める理想の子どもを演じる楓。
いつも我慢していて窮屈さを感じ、
時に気持ちが爆発しそうになっている。
④九太⇔熊徹
本当の親子ではないものの
熊徹がずっと九太の親代わりのつもりでいたり
九太が自分のことを
「バケモノの子だ」と言ったり
心の中では親子の絆がハッキリとできていた。
九太と熊徹のような師弟関係は
本当に普通じゃなくて
傍から見れば
いがみ合いのようにも見えるのですが、
イヤなことはイヤ、
間違ってることは間違っている
と九太が熊徹に言いたいことを言い、
熊徹はバケモノなので
何を言われても恨みが残らず、
お互いに遠慮のない気持ちの良い関係が
築かれているんです。
一郎彦や楓が
親に遠慮して言いたいことを言わず
我慢を募らせるのとは対照的。
【お互いに自分をさらけ出して
本音でぶつかるからこそ
対立することはあっても
信頼関係が深まる】
んですね。
そして、
お互いにとってかけがえのない存在に
なっていくんですね。
また、漣の人間界の両親にしても、
蓮の気持ちを大事にしてくれて
必要な時に必要な手助けをしてくれる、
温かい存在です。
九太と熊徹、漣と両親、
それぞれ違いはありますが
どちらも
ともに尊重し合って、自然体でいられる。
現代の親子らしい姿なのかもしれないな、
なんて思うんです。
映画を読み解くにはこれが重要!キーワード3つ
クジラ
作中に何度も登場する「クジラ」は
この作品の重要なテーマの一つ。
九太が楓に出会う
きっかけとなった小説
『白鯨』
私は読んだことがありませんが、
「白鯨に足を食いちぎられた船長が
その鯨への復讐心を燃やす」
というような話だそうです。
楓は『白鯨』について九太に
こんなことを言っています。
主人公は自分自身と
戦っているんじゃないかな。
つまり、
鯨は自分自身を映す鏡で。
楓がそう語るように、
この作品の中でのクジラは
「自分自身の象徴」と考えられます。
心の闇を抱える一郎彦に九太は
自分を重ねていた。
だから九太はクジラと戦ったんです。
戦うのは敵ではなく、
自分自身で。
すでにお分かりかもしれませんが、
めっちゃネタバレしてますが
一郎彦は人間です。
だから自分を見失い、相手を恨み、
心の闇に飲み込まれてしまったんですね。
その闇がクジラの姿で
九太に成敗されることで
一郎彦も救われました。
九太が一郎彦自身を恨まなかったのは、
自分をバケモノの子だと受け入れたから。
人間なら、
相手を恨み
心の闇を大きくしていくけれど
バケモノは恨まないんです。
「胸に宿る闇」と「胸の中の剣」
人間が
自分を見失い、恨み、憎しみ、
妬み、怖れ、孤独を感じる
そういったものが心の中で育っていくとともに
だんだん大きくなってくるのが
「闇」
「空虚感」でもあり
「自己否定」でもあります。
九太も子どもの頃に
心の中に宿った闇があって
再会した父親への反発心をきっかけに
闇が再出現してしまいます。
熊徹の下で修業していても
人間という危うさは消えなかった。
それを熊徹は分かっていたんですね。
九太を助けたい一心で語る言葉が
この通りです。
九太は自分じゃ
一人前のつもりでいるが
今はまだ誰かの助けが
必要なんだ。
俺は
半端もんのバカ野郎だが
それでもあいつの役に
立ってやるんだ。
胸の中の足りねえもんを
俺が埋めてやるんだ。
それが半端もんの俺ができる
たった一つのことなんだ!
熱い言葉ですよね(涙)。。
胸の中が足りていない=闇
ですね。
足りないものとは何でしょう?
それが、修行の最初に熊徹が言っていた
「胸の中の剣だよ!あんだろう!
胸の中に!剣が!」
胸の中の剣です。
熊徹にはあって九太にはないもの。
心の闇は、
光という剣を失っている状態と考えると
蓮が無くしたのは母親という光。
一郎彦がなくしたのは父親という光。
さらに自分も見失って闇は大きくなる。
熊徹には
親はもともといなかったけれど、
揺るぎない、自分への信頼。
信念があって
それこそが胸の中の剣として光っていた。
・大切な存在があること、
・自分を信じること
その強さこそが「胸の中の剣」
なのではないかと思います。
人を育てることは自分を育てること
この映画の見どころは何といっても、
九太と熊徹が修行を通じてともに
成長していく姿。
バケモノ界でも
一目置かれるほどの
実力を身につけた九太。
身体も心も大きく成長しています。
その傍らでいつも、温かく、時に厳しく、
見守り手助けしてくれる
百秋坊と多々良という存在も
見過ごせません。
九太と、百秋坊と多々良、
その全てを見守る宗師、
その人たちの中で、
じつはもっとも成長したのが
熊徹自身。
孤独な生立ちで、味方もおらず、
自分勝手に生きることしかできず
他人に合わせることが
一番苦手だった熊徹。
それが、みんなのサポートの中で
師匠として親として、九太を思いやり、
誰かのためにという心を
育てることができたんです。
九太と息を合わせて猪王山と戦い、
九太の窮地に身を投げ出して
九太を守ろうとしたその行いには、
かつての粗暴な熊徹の姿はありません。
熊徹の思いの強さ、
二人の心の繋がりには
涙がこらえきれません。
子どもを育てている方なら
分かると思うんですが、
育てるって本当に難しいですよね。
言ったとおりに子どもが
動いてくれるわけじゃないし
まずは自分が
きちんとした人間でいなくちゃいけないし
何かを教えるということは、
本当に自分がそれを理解していないと
教えられないということも。
熊徹は、まともな弟子は
九太が初めてだったので
初めての弟子育てという子育てに
相当苦労したと思います。
その中で心も技も磨かれていったのは
当然といえば当然。
ずっとそばにいてくれた
百秋坊と多々良。
後継者としてずっと信じていてくれた宗師。
正々堂々とライバルとして存在してくれた猪王山。
全力でまっすぐぶつかってきてくれた九太。
すべての関係が熊徹を支え育ててくれた。
熊徹と九太、周りのバケモノたちの心通わせる物語。
まとめ
最後に、
乱暴だけど温かい、
熊徹役の役所広司さんの声が最高です。
九太が子どもから急に大人になった時の
宮崎あおいさんから
染谷将太さんへのギャップも
めっちゃ素敵です。
インテリで品行方正な百秋坊にリリーフランキーさん
皮肉屋で感激屋の猿、多々良に大泉洋さん
九太へのライバル心に狂う一郎彦に宮野真守さん
飄々とした品格のある宗師に津川雅彦さん
声優陣もイメージぴったりで最高!!
一度は、
いや二度三度と観たくなること
間違いなしです♪
夏休みに親子で
ゆっくり観てみてくださいね!
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